私が妻の浮気現場を目撃したのは、営業で社外にいるときでした。
そこはとある繁華街の一角でかなり賑やかな雰囲気でした。昼間の12時過ぎはランチを取ろうとしている人であふれており、私も一息つこうと思った矢先でした。交差点を渡って向こう側の飲食店街へ足を向けようとしたのですが、正面から妻と知らない男が腕を組んで歩いてきました。子どもはいないものの結婚5年目で夫婦生活は順風満帆、その関係を危ぶんだことなどただの1度もありませんでした。
ただ知らない男と歩いているだけなら、まだ何かの理由を探っていたかもしれません。同級生と街で偶然再会したという理由を見出すこともできたはずです。ですが、腕を組んで歩いていたらそこに恋愛感情がないわけありません。目撃したショックで頭の中が一瞬真っ白になった私ですが、気付けば声をかけられず人ごみの中に紛れて様子をうかがうのがやっとでした。
ランチどころではなくなってしまったので、浮気している妻と知らない男性を尾行することにしました。見つからないよう慎重に尾行を始めた私は、その浮気が決定的であることを確信しました。それは、2人が昼間なのにどこか薄暗いホテル街へと消えていったからです。順調すぎる夫婦関係にこそ亀裂は走りやすいという誰かが言った言葉を思い出し、私は妻が浮気をしていたショックに項垂れるばかりでした。既婚者の3組に1組は離婚する時代ですが、離婚はこうして相手の浮気から始まるのかもしれないと私は呆然として途方に暮れたのです。