2010年02月08日
解雇の金銭解決がイタリアでは既に法律
県立図書館に行って本を2冊借りてきました。涌井美和子さん著「職場のいじめとパワハラ防止のヒント」と、梅津祐良・岡田康子著「管理職のためのパワーハラスメント論」。
涌井先生は社会保険労務士・臨場心理士であり、この分野の第一人者です。また梅津先生は早稲田大学の教授で著書「人材尊重マネジメント」という優れた本を書かれています。岡田康子さんは言わずと知れた(株)クオレ・シー・キューブの代表取締役で、パワハラの言葉の生みの親であります。
当事務所にはこのところ職場のいじめやパワハラの相談が多いので、この問題に関する研究をさらに深める必要性を感じています。集める事例は多いに越したことはありません。
若い頃、心理学者を夢見ていた時期があったので、こういう分野の勉強はさくさくと頭に入っていくようです。
それはさておき、図書館に行った主目的は、諸団体による労働法関連の機関誌を眺めてみることでした。日本労働弁護団や日弁連の機関誌は普通は書店に売っていませんので。
ある機関誌に、イタリアにおける解雇規制に関する研究といったタイトルの記事が目にとまり、読み進めていくとなんと解雇を金銭で解決する法律がイタリアに存在し、企業規模によって月額の16ヶ月分とか5ヶ月分とか決められているのだそうです。
解雇に合理的な理由がない場合で、どうしてもこの従業員は気にくわないという場合にその従業員の月給額の16ヶ月分を支払えば解雇ができる。企業規模14人以内では5ヶ月分を支払えばいいのだそうです(本当は、労働裁判で解雇が無効となったときに金銭で支払うことで解雇を有効とすることも可能である、という趣旨の法律のようです。また、数字は私の記憶です)。
こういう法律があれば、労働局紛争調整委員会のあっせんで、解雇に合理的理由がないと言ってもたった1ヶ月分に満たない金額で和解をせざるを得ない状況はなくなるのではないかと思います。労基法で定める解雇予告手当にも満たない金額で解決するのもやむなしとする大学教授や弁護士のあっせん委員が存在することには義憤さえ覚えます。
私がブログ記事「突然の懲戒解雇は中高年齢者にとって死刑宣告」で言ってみたことが、既に外国では法律になっているんですね。
2010年02月06日
就業規則の服務心得と懲戒の部分しか公開しない?
当事務所に相談に来られる労働者の相手方企業の経営者が、30代の若い方が多いことが気になっています。ネット販売会社であったり、人材派遣会社だったりサービス業等を自ら起業した方々です。
事業を軌道に乗せるために起業家は最大限の努力をし、営業開拓を行い少人数で夢を追いかけておられます。そのことを私は心から応援したいし是非とも成功してもらいたいと思います。
ただ、従業員として雇用した社員には、強行規定である労働法を遵守した労務管理を行っていただかなければなりません。役員ではないのですから。
企業家になるために試験制度などありませんし、事業意欲のある方であれば誰でも起業できます。中には人事労務の知識が不十分な方が、想いと情熱だけで従業員を採用し、自分の情熱を従業員にも暗に強いているケースがあるようです。
「働け。自分で考えろ。アイデアを出せ」などと発破をかけておきながら、月給20万円固定で残業手当皆無しです。ノルマを達成しないと解雇だ、などと強制労働まがいの半ば狂気の沙汰だったりしています。
こんな会社に間違っても入社しないためには、応募時点や面接時に可能な範囲で見極める努力をすることが大切です。今は商法改正で、一人取締役で「株式会社」が認められていますので、社長独裁であり監査役も不在という会社があります。
取締役会が存在し適正に機能していれば、役員同士で意見を戦わせることでコンプライアンスがある程度確保されることが期待できますが、一人取締役だと・・・。
商法も規制緩和、労働法も規制緩和ですから、働く人たちも自分で防備する必要があります。
チェックの方法として何よりも有力なのが労働条件通知書をきちんと文書で渡してくれる会社かどうか。それと就業規則を開示している会社かどうかです。
中には労働時間について書かれた箇所や年次有給休暇や賃金規程は一切公開せず、服務心得や懲戒規定の部分だけを抜き書きして渡す会社が見受けられます。
会社に有利なこと、従業員を拘束する部分だけを周知させ、労働者の権利に関する部分は隠しているのです。それでもって当社は就業規則を公開しています、などとよくも言えたものです。そんな会社に入社したら自らの権利がある程度制約されることを覚悟しましょう(冗談)。そのような会社にはみんなで入社しないようにしましょう。
経営者は、年次有給休暇や割増賃金などを従業員から一方的に要求されたら会社は回らないことを心配しているようです。権利だけを主張し仕事は適当にする従業員が跋扈することを怖がっています。
それはそれ。本当に問題社員なら、彼らに対応した規定を顧問社労士に依頼して作成し適用させればいいではないですか。その問題と年休の権利や割増賃金の権利とは別個のものと認識するべきです。
また、いくら若く経験の浅い社長であっても、年配の役員やきちんと意見を持った従業員らの存在があれば、それとなく社長の独裁を牽制することができると思うんですが。甘いでしょうか(苦笑)。
2010年02月04日
非正規労働者に関するテーマで講演しました
本日、ホテルセントラーザ博多で、社労士会主催(厚生労働省委託)のセミナー「伸びる企業の人材確保術〜有期契約労働者の雇用ルールと活用事例〜」で講師をさせていただきました。
前半の1時間を「有期契約労働者の雇用ルール」と題して北九州市の江口勝彦先生、後半の1時間を「有期契約労働者の活用事例」と題して私が担当しました。
前半、江口先生による堂々としてメリハリの効いた話ぶりに圧倒されつつ、後半の私の話となりました。
有期契約の労働者、つまり非正規労働者の問題は「派遣切り」を持ち出すまでもなく、ワーキングプアや格差社会の原因となっている社会的問題であります。
私はそうした視点で一度フォーカスした後でないと、非正規労働者の活用事例だけを淡々と解説する気には到底なれませんでした。
江口先生による前半の講義は労基法、労働契約法、民法及び厚労省ガイドラインによる有期契約のルールを説明されながら、ご自身の体験や考えを間に挟んでおられ、本当にわかりやすくまとめられておられました。
私はテキストどおりいきなり活用事例の話をすることをやめ、前半のお話を敷衍、深掘りすることが大切だと考えました。なぜ今、有期雇用契約や派遣労働が問題となっているのか、正社員として全員を雇用しないのは何故か、わが国の雇用システムが歴史的に抱えている問題点が他国と比較してどうなのか、などを参加者の皆さんに考えていただきたいと考えたのです。
現代の日本の雇用社会で非正規社員が置かれている状況を認識した上で、我が社として有期契約労働者とどのように対峙していくべきか、を考えたなら、何も他社の成功事例を研究するまでのことなく、我が社に合った処遇や雇用のルールが自ずと発想されるのではないでしょうか。
日本のいわゆる正社員の働き方を、本当にこれでいいのか、非正規社員との比較でバランスに欠けていないかをそれぞれの企業で点検してほしいと思います。転勤あたりまえ、職種変更の配置転換、それに目標管理制度のもつ暗黙の長時間労働強制などわが国の「正社員」の持つ負の側面は、逆にそっくりそのまま有期契約労働者のプラスの要素となっています。
また、解雇規制については昭和50年代頃に確立した整理解雇の判断基準を、現代の雇用状況の中で金科玉条のように守っていていいのだろうか。解雇規制が異常に厳しいから企業が非正規社員を増やす動機付けと成っているのは明らかです。
家庭における夫婦の価値観が変容し、生活スタイルや働き方まで30年前とは大違いです。妻が専業主婦という家庭は少数です。共働きで子育てしながら働かなければならないのに非正規社員だからという理由だけで低賃金というのでは合理性がありません。
また、雇止めの労働審判事件の事例や、正社員のメンタルヘルス不全の相談の事例など、私が経験したことをお伝えし、正社員の濃厚な働き方と非正社員といういわば経営者から不当に軽んじられている労働者とのアンバランスを、指摘したつもりです。
EU諸国では正当な理由がなければ有期雇用契約ができない国が主流となっていますし、均等待遇つまり同一労働同一賃金はあたりまえであり、社会的通念となっているようです(参考;濱口桂一郎著「新しい労働社会」)。
また、米国は正当な理由が無くても労働者を解雇できる国ではありますが、一方「均等待遇」は言わずもがなの常識となっています。
私は演台に上って、こういうマクロ的な話をするのは慣れないものですからしどろもどろになった感があります。終わってみて社会保険労務士はやはり論者ではなく実務家なのかな(笑)、と思いましたが将来のわが国の労働社会を考えて問題提起できるような社労士がいてもいいだろう、と思います。
良い体験をさせていただきました。
2010年02月02日
地下鉄に広告を出しました
福岡市営地下鉄に弊法人の広告が掲載されました。2月1日から1年間、市営地下鉄の全車両に掲載されることになっています。「労働者のための労働相談所」というタイトルです。
小さい文字で、社会保険労務士法人パートナーズの文字と、特定社会保険労務士 しのづかの名前が記載されています。
弊法人でも出せるくらいですからそんなに高い広告料ではありません。
特定社会保険労務士という資格名が世の中に知られる契機となれば、本望です。この年齢まで生きてきた甲斐があったということです(笑)。
弁護士や司法書士より先に福岡の地下鉄で一般向けに労働トラブル解決支援の広告を出したことに意義があると考えています。
さっそく、今日この広告を見たと思われる若い女性から電話相談がありました。お店が給料を支払ってくれない、という。先日の反省を生かし、やさしく話を聞き、裁判所の手続きまで教えてあげたところ、「丁寧に教えていただき、ありがとうございました」と、感謝されて電話を切られました。
職員から、「所長はもう、まったく商売っ気がないんだから。今月の売上はどうするんですか?」と言われそうですが、人に親切にして、その結果感謝されるだけで私は本望です(´−д−;`)
2010年02月01日
セクハラの相談あり。企業の防止対策は急務です
セクハラの相談がありました。被害者からではなく思い余って友人が相談してきたものです。
セクハラは犯罪であることがこれほど喧伝されている中で、なおセクハラ行為が起きているようです。地位や権力を持った人間のモラルの欠如を思うと悲しくなります。
ことが性的なことだけに、被害者が事実を表に出したくないという側面が、セクハラ事件を潜在化しています。また、断固とした拒否をしなかった自分に対する負い目があるようです。抵抗したら君は首だ、などと言われたら抵抗できなくなるのはしかたがないことです。加害者が卑劣すぎるのです。
見るに見かねて友人が私のところに相談したことは、これ以上の被害の拡大を防ぐ意味で有意義だったと思います。
雇用均等室の調停や労働審判などを全力で支援させていただきます。
当事務所に相談が来るということは女性社労士の事務所にはもっと多くのセクハラの相談が寄せられていると思います。
当事務所にも女性社労士の井手がおります。男性の私に言いにくいことは井手がお聞きすることになります。今後、特定社労士の試験に合格したあとは一人ですべて対応できることになります。
それはさておき、性欲は人の本能だからその行為や言動そのものになんの恥じたる部分はないとは思いますが、職務上の地位を利用して女性の自由意思を束縛したものや、職場の雰囲気を悪くする言動は厳しく罰せられます。
性的な行為や言葉は、はっきりプライベートな場面だけでお願いしたいと思います。
また、会社は実効性のあるセクハラ防止対策を強くお願いします。
モラルがない企業にはモラルのない社員が育ちます。経営者のコンプラ意識や高いモラル意識こそが大切です。

