2009年07月09日
ある事件で、月額賃金を40万円から35万円に無理矢理引き下げておきながら、その後異議を申し立てなかったから黙示の承認があったのだ、という主張を会社側の弁護士がしています。
労働条件の最も重要な部分である月額賃金を、当該従業員の同意を得ることもなく説明もなく、しかも給料日の直前に一方的に通告することが許されるわけはありません。
当然に当該従業員は異議を申立てます。なぜ下げたのか、と。一方会社は業績不振だから、とか理由をつけて説得にかかるでしょう。
そのまま話は平行線となり月日が経過してしまいました。
2年という月日が過ぎて当該従業員が自己都合退職することになり、あのときの賃金切り下げは労働契約法違反である、と提訴しました。
会社と従業員との力関係は圧倒的に会社側が強い。だからこそ会社側は労働条件、特に賃金の引き下げを確かな評価基準もなく実行するときには、文書で同意をとっておかない限り、訴えられてもしかたがありません。
会社側弁護士は、その5万円の賃金引き下げの際に、異議等をしなかったので黙示の同意があったことは明白である、と言う。
法廷での泥沼の戦いになったら会社側弁護士は正義感などみじんも感じられないほど、会社側に有利になるよう強引な法解釈や判例解釈をするものだ、と感心してしまいました。
(相談者の機密保持のため一部フィクションを交えており、事実と相違するところがあります)
2009年07月08日
割増退職金の提示を受け退職勧奨をされている正社員からの相談がありました。退職勧奨が飲めないならば解雇だ、と言われており悩んでいる。解雇になったら退職金の割増をしない、と通告されているそうだ。
業績不振についての説明が不十分な点や、人件費以外の経費削減努力が足りない点、営業員の中途採用をおこなっていることを挙げて、納得がいかないという。
決算を公開し、人件費削減の必要性を説明し協議する必要性はあるにしても、そうした説明がないからといって直ちにその整理解雇が無効であるとはいえません。
また、営業員の中途採用の募集をかけているからといって事務部門の整理解雇が直ちに無効であるとは言い切れません。
他の経費の削減をしていない、という主張を労働者がするなら「削減努力は常に行っている」と会社側から反論されることは見えています。現に役員給与のカットは行った、と会社は文書で主張しています。
整理解雇の代償措置として退職金のほかに月額給与の7か月分を上乗せするという。また希望退職募集の手続きを経由しての退職勧奨である。
私は相談者に、この代償措置は十分な金額だと思われる。少ない提示額ではない、と意見を述べました。相談者は私の意見を参考に、おそらく勧奨退職を受け入れる方向で考えます、と言って帰っていかれました。
労働局のあっせんの申請をしたとしてもおそらく同じような方向性が出るでしょう。逆に会社側が代償措置の額を下げてくるリスクもあります。
私はあっせんの代理人として仕事を行っていますが、あっせんを申請しないことを選択するようアドバイスすることも大切なことだと考えています。
(この記事は相談者の機密情報保持のため、事実と異なる記述があります)。
2009年07月07日
大阪市此花区のパチンコ店放火事件。逮捕された素直容疑者は名前のとおり真面目な人間だったらしい。借金2,3百万。大した額ではない。それでも世の中に嫌気がさし、誰でもいいから殺したいと思った。
NHKニュース9で作家の佐木隆三氏は、世の中に対する批判精神であり彼の41年の道筋を明らかにする必要がある、といった内容の意見を述べていました。
彼は大阪の石油製品販売会社を辞めたというか、辞める羽目になったようです。この会社は、世の中の不景気を理由にして当然のように社員を辞めさせることができるかのように錯覚したのではないだろうか。それをこの素直容疑者に実行した。素直氏はそのことで会社を恨み世の中を恨み、結果としてこの犯行に及んだ。
昨年の秋葉原の白昼連続殺傷事件はもっと衝撃的でした。彼jは派遣社員という境遇を原因とする犯行でした。
日本の雇用社会はゆがみきってしまっています。
今日の午前9時20分、大企業の正社員として勤める40代の女性から電話相談がありました。いろいろ話をした後、彼女は言いました。「会社は人件費を削減した管理職者を高く評価しており、人件費を景気の調整弁にしている」、また「熟年のベテラン社員が会社に物申すというものから程遠い存在になっている」という。年功序列の昔から日本の企業にあったいい意味での自浄作用が、今は大企業の組織には働いていないのlだという生の現実を知りました。
資本の論理と労働者の権利との対立は、途方もない状態となっているようです。かつての日本的労務管理の長所であった協調的労使関係が夢の世界になりつつあります。
NHKニュース9は今日の番組の最後に「ダブルワーカー」をルポルタージュしていました。残業が減り正社員であっても手取り16万円弱の妻子持ちの男性が、毎週の土日に時給1000円1日10,000円のアルバイト(警備の仕事)をしなければならない現実をどうしたらいいのでしょうか、と言っていました。
このように、資本家の論理に偏りすぎた日本の雇用社会を変革するには、政権交代しかありません。はたして民主党がその任を任せるに十分かとなるとそうとも言えません。しかし、このままでは日本の社会は無差別殺人事件が頻発する社会になることだけは確実といえるでしょう。
中小企業家同友会のある委員会の会議に出席してきました。その名は経営労働員会。経営者の立場から労使問題を学ぶ委員会です。
この会のいままでの多くの活動は、経営理念的なものが多かったのですが今年は実務を学ぶ場とする必要がある、との意見が多く出まして、労働基準法や労働契約法、ワークライフバランス、人事評価、賃金の実務について勉強家を行うことになりました。委員会が主催し会員全体に勉強会への出席を呼びかけることになりました。
労働基準法と労働契約法についての講義は私が担当することになりました。私が労基法知識の大切さを会議の場で強く主張したため、自分で責任をとることになったものです。
理念や経営哲学をいくら講演で聞いても、それぞれの企業に持ち帰り活かすにはハードルが高いものです。ベースとなる知識がないと実現は難しい。太平洋を渡ろうにも船がなければ渡れません。
労働時間法制度や年次有給休暇、36協定、退職証明書、会社都合休業、解雇権濫用の法理など、経営者として知っておかなければならない重要な基礎知識が労基法にはふんだんにあります。
サブロク協定ってなに?と、同友会のグループ討論で会員経営者から聞かれたことは一度ではありません。人間尊重経営の理念はわかっていても36協定さえ知らない経営者が多いのです、この会には。
それでは片手落ちというもの。
1回の勉強家は2時間、労働基準法・労働契約法の講義は2回開催されることになりましたので4時間が与えられました。これだけの時間があれば中身の濃い話ができそうです。
決して経営者サイド寄りの「法の抜け道」みたいな話にならないようにしたいと思います。私も開業当初は経営者に媚を売るような話をしていたことを反省しています。やっぱり「労使の信頼関係を構築するため」との目的は見失わないようにしたいです。
2009年07月06日
BSジャパンの日曜昼12時からの1時間番組が、勝間和代氏による「カツケン」に変わりました。先月までに「こちら経済編集部」、立教大学山口義行教授らが企画し出演していた番組が終了したため。
第1回「カツケン」(勝間和代経済研究所の略称とのこと)のテーマは「格差社会」。雨宮処凛氏や森永卓郎らが出演していました。
所得格差や教育格差、雇用格差などの格差を生んだのは米国追随型を迷いもなく突き進んだ結果であり、今やOECD各国の中で、貧困層の割合が2位であるとのこと。なんと1位は米国である。
豊かな国のはずのアメリカが、年収200万円以下の層の割合が先進国中最も多い国となっているそうです。日本は米国を真似てきたため、2位。
格差社会を是正するために何が必要か、という話題の結論は、
1.正社員の解雇規制を緩和すること。
2.週48時間を超える労働をさせた会社を厳罰化。
3.セーフティネットの充実
だったかと記憶しています。
私は1は、反対、2には賛成、3は、中身の問題と思います。
雇用保険とか生活保護とか生活支援といった経済的支援よりも、精神的サポートや相談体制が不足していると思います。NPOなど民間の機関がもっと労働者の相談に応じることが大切だと思います。
正社員の解雇ルールを緩和することには、反対です。終身雇用とはいかなくても長期雇用を前提に雇用されることに重要な意味があります。業績不振による解雇(整理解雇)も、現在の4要件に沿って実施すれば問題ないはずです。


